スタッフ紹介

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代表あいさつ

土地と「とち」をみつめる。

 ビルしかない土地で育った自分にとって農業の発端と動機は宮沢賢治でした。賢治を初めて手に取ったのは小学一年。「銀河鉄道」でした。ただ、その時点ではうっすらとした悲しみの感情以外に強い記憶はありません。以降、たどたどしい読み手でしたが、放課後の図書室で読み重ねました。類をみない独特な文字の列とあの「世界観」への興味がそれをさせたのですが、当時は描かれた世界の具象のみに浸って幻想を追い、決してその意味の深部について顧みることもない読書でした。
 やがて、書き手の背景と意味に興味をもつ年頃になってから、花巻農林学校の教鞭をとる彼の残像が心を占める様になり、そして大正末から昭和初期への農学大混乱期の日本政治思想史へと心は向きました。柳田國男のあくまで農政官僚の影絵としての民俗学と、農政議論としての農村運動から見た横井時敬の激しい議論は、今日の農政に直結しており、こんにちに見ても興味深いものです。ただ、それは机上では過去の話でした。
 しかし、いざ実際に土を握れば、賢治の背中はそこにありました。多分に心情として地方農林政疲弊の急先鋒の「現場」で途方に暮れる一人の農技官への想いはぶりかえし、思いは再び賢治の現場へと戻りました。重ねられた混乱と失策さらには時代の激変そして人の断絶が地域にもたらすもの。そして罪悪感と土地への諮詢。
 彼が土を見つめたことを想いつつ、手で何かすることに帰ろうと思って取り組んでいます。

 

P.A.C farm "EBISU"代表

Hiroaki.Inohana